2010年8月23日月曜日

十三夜---「葬送曲」

濡れた舌にくるんだ夜を
黒猫が 齧る

カリコリ
と、微かな音を立てて
カリコリ カリコリ
と、漆黒の闇に響き渡る

足元の、朗々と流れ続ける川面を覗き込めば
途方に暮れるだけ、記憶の欠片がその片割れを求め

カリコリ
と、響き続ける音色にのって 名もなき稚魚が飛び跳ねる
人が記憶の向こうに隠し込んだ過去たちを
数え上げるように

黒猫が夜を齧る カリコリ、という音と
名もなき稚魚の飛び跳ねる パシャリ、という水音が
響き続ける、夜が明けるその日まで