十何錠もの薬を毎食毎食飲んで、それでもパニックが起こればフラッシュバックが起これば頓服を飲んで、夜には夜でさらに薬を飲んで。
私たちの体って、ほんと、薬漬けだよね。もはや薬中毒。
彼女が乾いた声で笑う。
薬なくして、今私たちの生活は成り立たない。山ほどの薬を毎度毎度飲んで、そうして何とか心を保っている。そうでしか、世界に在ることができない。
それでも。
遠いのだ。
今降り注いでいるはずの陽射しも、今足の裏に触れる土も、流れ往く風も、実感が伴わないのだ。すべてがすべて、上滑りしてゆく、そんな感じで。
私たち、世界からすっかり、取り残されたね。
彼女が言う。
もう戻ることはできないのかな。
私は何も応えず、ただ、シャッターを切っている。