その頃私が住んでいた場所は、線路沿いだった。線路から二本ほど通りを入れば、すぐに私の家だった。
彼女は私とそう歳が違わない。違わないのだが、酷く小柄なせいだろうか、その顔の向きによって、はっとするほど幼く見えることがある。
どきりとするほど、少女になってみせることが、ある。
すぐ後ろを電車が通り過ぎる。そのがたんごとんという音を聴きながら、私は柱によじのぼり、何とかバランスをとってその上に立った。
斜めから見下ろすと、彼女のちょっと俯いた顔は、こちらが頬にキスをしたくなるほど、かわいらしい輪郭を見せた。
ね、ここで撮っていい?
いいけど、落ちないでよ。
わかってるって。
裂けた鉄条網が、ぶらり、垂れ下がっていた。
風は微風で、彼女の肩で切りそろえた髪を、時折ふわりと揺らしていた。
寒い寒い二月の、午後だった。