2010年8月4日水曜日

枯れ枝に

森の中、あちこち歩く。あてもなく歩き続ける私たち。
ふと、目の前の窪地に、大きな大きな枝を見つける。

これ、あの樹の枝なんだろうね。
折れたんだね。
見事な曲線描いてる。
うん、見事だ。美しい。

多分、嵐か何かで、折れたのだろう大枝。窪地の真ん中に、でんと横たわっている。私たちはそっとその枝に近寄ってみる。

この枝は、いずれ朽ちていくのかな。
そうなるまでには、かなりの時間が要るだろうね。
誰に知られることもなく枝は折れて落ちて…
やがて朽ちてゆく。
そういえば、こんな物語、なかったっけ?
誰が森の中で倒れる木の音を聴いたか、みたいな。
うんうん、そんな物語、どこかにあった。

辺りを見回しても、人影ひとつなく。時折少し離れた幹を駆け上る栗鼠の姿があるばかり。自然、私たちは、その枝に寄りかかっていた。

こうやって誰に知られることもなく歳を取って、
こうやって誰に知られることもなく朽ちていって、
そうしてまた、命は継がれてゆくんだろうね。
うん、そうだよね。

空を見上げると、ぽっくり浮かぶ白い雲が一つ。それはとても美しくて眩しくて。