空 樹 海 風
海と空と風と樹と。小さな私と世界との対話。
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2010年8月24日火曜日
十三夜---「恋の感情」
繰り返されてゆくしぐさで
記憶に 埋め込まれてゆく
微妙な角度の違い
速度の違いで
猫の眼のように変わる 恋の色合いを
はかっている 互いに
疑い合うことが
信頼をうわまわり、
罵り合うことが
語らうことを押し退けてゆく頃、
終章さえ見失ってしまった
恋の姿に 気づく。
2010年8月23日月曜日
十三夜---「葬送曲」
濡れた舌にくるんだ夜を
黒猫が 齧る
カリコリ
と、微かな音を立てて
カリコリ カリコリ
と、漆黒の闇に響き渡る
足元の、朗々と流れ続ける川面を覗き込めば
途方に暮れるだけ、記憶の欠片がその片割れを求め
カリコリ
と、響き続ける音色にのって 名もなき稚魚が飛び跳ねる
人が記憶の向こうに隠し込んだ過去たちを
数え上げるように
黒猫が夜を齧る カリコリ、という音と
名もなき稚魚の飛び跳ねる パシャリ、という水音が
響き続ける、夜が明けるその日まで
2010年8月22日日曜日
十三夜---「女」
しなだれる 女の
髪のにほひほど
まやかしで ある ことを
教えてあげよう、おまえに
今 ここで
ほら、
おまえの腔が
あたしの腔が
熱く熱く 膨れているのに
あたしはこうしておまえのことを
見下す眼を 持っている
「 それが 女 」
2010年8月21日土曜日
十三夜---「嫉妬の貌」
己の顔が、
鏡に映る己の顔が、見るも無残に爛れ、
その顔に
影のように寄り添い 知りもしない女の顔が
あらはれ、
透き通るように白い 滑らかな肌に
まだ 何の穢れも知らぬ気の、黒き瞳を湛える女の顔が
あらはれ、
私は、
為す術もなく、鏡に映る、その
二つの顔から 眼を逸らすこともできず、
あぁ、
鏡には今夜も 二つの顔があらはれ、
あらはれ、
2010年8月20日金曜日
十三夜---「十三夜」
月が嗤う
たらり たらり
青い血が たらり
夜が 深まる
白い血が だらり
夜が 浮き立つ
たらり たらり
嗤うごとに
気を遠くさせる
2010年8月19日木曜日
十三夜---「 」
私は何処
何処にいるの
夥しい数のしゃれこうべ
この地上を覆い尽くすように
この世界を食い尽くすように
こんな中からどうやって
私を見つけたらいい
それでも見つけなければ
私はぶつかり合い乾いた音を立てる骨々を
掻き分けながら 探し続ける
私は何処
これでもない あれでもない それでもない
でも必ず在るはず
私は必ず
この世界の何処かに
だから私は探し続ける
この世界で生きていく為に
2010年8月18日水曜日
十三夜---「悋気」
この満月を、おまえに
気付かれる前に 呑み干してしまいたい
のっぺらとした頬を
撫ぜる黒闇を真似て
この手では決して触れること叶わぬおまえの
その輪郭を
なぞっては みる けれど
こうしているうちにも おまえは
その妖躰を
猫の眼に 晒している
2010年8月17日火曜日
十三夜---「誘惑」
黒髪をほどいて
振り向くな、女
たちこめるおまえの匂いで
息が できない
すべてを見透かしたような
邪気に噎せ返る唇を
晒すなよ、女
それが
熟れた果実なら
誰だって
貪りたくなる
2010年8月16日月曜日
十三夜---「不倫」
髪が のび、
ひきずるほどに
のび、 想いも
綴れない言葉が
その重さ全身でのしかかり、
私は
まるで
他人に見える自分の
顔 を、
鏡の中に 見つける。
2010年8月15日日曜日
十三夜---「月」
それ以上欠けることも 満ちることも知らぬ月が
夜の闇に ぽっかり 浮かぶ。
男が思う。重なり合いながらもひどく
冷たい女の唇によく似ている、
と。
女が 呻く。抱き合いながら見下ろしてくる
冷めた男の眼にそっくりだ、
と。
それ以上欠けることも 満ちることも知らぬ月が
夜の闇に 浮かぶ。
ぽっかり
ぽっかり
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