彼女との撮影はもう何度目だろう。遠く西の町に住む彼女が、薬を飲んで、それでもこうしてやって来てくれてはカメラをはさんで向き合う関係。
彼女は性犯罪被害者であり、DV被害者でもある。また、機能不全家族に育ったACでもある。PTSDを発症してからもう何年。
今もまだ、解離やパニック、失声、フラッシュバックなどにたびたび襲われる彼女。症状はきつい。
性犯罪被害の時、彼女は加害者たちに写真を撮られた。そのせいで、カメラのシャッター音が怖いという。私はそんな彼女に合わせて、カメラを使い分ける。
不思議だね、他の人のカメラはダメなのに、ねぇさんのカメラは怖くないよ。
彼女が笑う。
私は黙って、カメラを構え、彼女の動くままに歩き回る。
ねぇさん、どうしてみんな、もう忘れなさいとか過去のことなんだからって平気で言えるんだろう。
彼女が呟く。