2010年9月16日木曜日

佇む

花屋に行くと、たいてい、短く切りますか、と尋ねられる。持ちやすいようにと考えてのことなのだろうが、私はそれが、とてもとてももったいないと思ってしまう。
この日も、Mちゃんと花屋に寄った。そこで、やっぱり、どのくらいまで切りますか、と尋ねられ、いえ、切らなくていいです!と、二人揃って応えていた。
家に持ち帰り、家中のバケツを集めて、そこにどんどん買ってきた花を挿していく。向日葵、トルコキキョウ、ガーベラ、その他諸々。花瓶では絶対見られない、豪勢な花たちの立ち姿が眺められる。
もう太陽はちょうど真上を過ぎた頃で。これから西に傾き始める頃。私たちはしばしぼんやり休む。

もともとうちに今あるテーブルは、結婚するときに買ったものだ。たくさんの人が集えるように、と大きな大きなテーブルを買った。離婚して、棄ててしまおうかと一瞬考えたが、あまりに立派なテーブル、そのまま棄てるには惜しくて。部屋が狭くなることを承知で、持ち出した。今、そのテーブルに付属のベンチに、Mちゃんはぺたんと座って窓の外を眺めている。

狭い部屋の中、二人が吸う煙草の煙がゆらゆらと開け放した窓の外に流れてゆく。その煙の行く先を辿るように、窓の外を見やる。傾き始めた太陽が、黄色い光を放っていた。
Mちゃんが何となく、向日葵に手を伸ばす。ねぇ向日葵ってさ、こんなに小さかったっけ。いや、大きいよ、子供の頃育てた向日葵は、こーんなに大きい花を咲かせて、これでもかってほどの種をつけた。そうだよね、こういう小さな向日葵って、何だか可哀相に見えるよ、私。あぁ、そうかもしれない。

ふと見ると、Mちゃんは向日葵と同化して、ひとつの置物のようにそこに佇んでいた。私はそれを邪魔しないようにそっと、シャッターを切った。