
ふと前を見ると。まるで昔々の朝礼台のような、木製の台があった。
これ、何?
わかんない、何だろう?
私が座っても…壊れないね。
うん、大丈夫みたい。
まるで特等席だった。その台に座って辺りを眺めると、百八十度水平線が広がっていた。海と砂浜とが、ただそこに在った。
なんか私、ちょっと偉くなったみたい?
ははは。
沖に漁船の影さえ見えない、まるで一枚の静物画のような光景。その光景の中に私たちは立っており。
時間が、止まったみたいだね。
うん、私もそう思う。
ここにいたら、夕暮れまであっという間に過ぎちゃいそうだ。
水平線が本当にきれい。真っ直ぐ。
太陽は少し西に傾き始めたところで。でも、ほぼ真上にあるには変わりなく。
私たちはその陽射しにくらくらした。
小学校の先生って、朝礼台に乗るとき、いつもこんな感じなのかな?
そうかもしんない。ちょっと緊張して、でも、眺めよくって。
自分がちょっと偉くなったようにも感じられたりして。
うんうん。
今思ったけど、この台に座ると、自分が石像になったような、錯覚に陥るよ。
陽射しは容赦なく降り注ぎ。
海は白銀に輝き、灰色であるはずの砂までもがちょっと離れたところから見ると白っぽく浮き上がり。
まるでモノトーンの世界だった。