そういえば私は、小さい頃、ベッドの半分以上をぬいぐるみで埋めていた。私よりぬいぐるみの分量の方がはるかに多かった。それでも足りなくて、機会があればぬいぐるみを増やしていった。
あのぬいぐるみたちは今何処にいるんだろう。覚えていない。
ぬいぐるみ遊びをしたわけではなかった。でもそこに在てくれる、ただ黙ってそこに在てくれるということが、私を安心させた。弟がいたせいか、幼い頃から私は一人で眠った。その一人の夜が、長かった。天井に映る影、チクタクという時計の音、外を往く車の音、轟々と鳴る風の音、すべてが必要以上に大きく、私に圧し掛かった。
そんなとき、ぬいぐるみたちが、私を見つめていた。私に寄り添っていてくれた。だから私は、安心して眠ることができた。長い夜を過ごすことができた。
私はぬいぐるみに、安心して良いよ、大丈夫だよ、と、いつも言ってもらっていたような、そんな気がする。
ぬいぐるみ。今我が家には、娘のぬいぐるみが山ほどある。
彼女にとって、これらのぬいぐるみは、一体どんな存在なのだろう。たくさんのぬいぐるみを枕元に並べて眠る娘を見やりながら思う。
どうかこの子を守ってくれますよう。この子の心をあったかくしてくれますよう。
祈るように、思う。