私たちはさらに歩く。そして出会う。
森の中の丘、ぽっかりと、まるで森が口を開けたかのような空間。
土の上を這う草も途切れ途切れ、私たちは足を泥だらけにしながら、その中央へ歩いていった。
見上げれば、梢もぽっかりと口を開け。空は丸見えだった。
今にもこちらに堕ちてきそうなほど唸り狂う空が、そこには在った。
けれど森は。
沈黙していた。
ただ、沈黙していた。
私たちは、そんな、森の中に在った。
彼女と彼がもたれかかって座り合う、その場所から私は少しずつ離れていった。
一歩、また一歩。
そうして離れた場所から彼女と彼を見やると。
まるで、一枚の静物画のようで。
私は、シャッターを切った。
猛り狂う空と雲。弄りつけてくる雨粒。
にも関わらず、そこには静謐さが在った。
犯しがたい沈黙が在った。
私は正直、彼女と彼に、見惚れていた。