一体どのくらい歩き続けたんだろう、私たちは。
台風はどのくらい、この町から離れていったろう。
分からない。私たちは誰もそのことを知らない。
もう森の中、何処をどう歩いたか分からない、というほど、私たちは歩き続けていた。雨に濡れ、冷え切った爪先は少し、痺れ始めてさえいた。
でも何だろう、濡れて泥だらけになればなるほど、彼女と彼の輝きは、増してゆくようで。
私は先導して歩きながら、何とも振り向いた。
荒れ狂うこの空の下、それはまるで、ひとつの灯りだった。
あの時、彼らの足は、もう痺れていたんだろうか。
傷だらけになっていやしなかったか。
何も云わず、ただ神経を撮影に集中させて、一心に自分に入り込んでいる彼と彼女に、私は余計な言葉は掛けなかった。
掛ける必要など、何処にもないように思えた。
そう、何処にも。
森を歩き続け、荒れ狂う自然の中歩き続けた足が、ここに、在る。