2010年3月29日月曜日

白い部屋01

白と黒があれば、グレーもある。実はその、グレーの部分、灰色の部分のなんと多いことか。でも私たちはつい、それを忘れる。

もし生まれてからこの方、無菌の部屋で育てられ続けたら。私たちは一体どんなふうに育ってしまうのだろう。いや、無菌の部屋、というからイメージがつきづらいかもしれない。たとえば、過保護、過干渉の親のもとで育てられ続けたら。私たちはどんなふうに育つんだろう。
私の親はたとえば。精神的虐待を為しながら、過干渉でもある親であった。そのことを振り返るとき、怖くなることがある。
私は、父や母の決める白と黒しか、長いこと知らなかった。灰色の部分があるということを、私は長いこと認識できなかった。また、それを自らが決めていいものだということを、私は長いこと、知らないで育った。
だからいざ、世の中にぽーんと放られたとき、私は途方に暮れたのだった。一体これから私はどうしたらいいのか、と。
だからこそ思うのだ。気づかないでずっと育っていってしまったら、一体どんなオトナが出来上がるのだろう、と。

最初何気なく撮ったシリーズだった。「白い部屋」。いや、最初からそのタイトルがついていたわけではない。明るいオレンジ色のカーテンを部屋に張り巡らせ、明るい日差しの中、撮った。それをそのままプリントすれば、明るいグレートーンの画となる。しかし。焼いていてふと、思った。これをもし真っ白にしたらどうなるんだろう、と。

無菌室。白くプリントして、最初に思ったのがそのことだった。あぁここは無菌の部屋だ。外からの菌を排し、隔離された部屋。その密室でたった二人、呼吸し続けていったなら。どんな恐ろしい光景が生まれるんだろう。そう思った。
現れ出る光景は平和かもしれない。穏やかかもしれない。でもその、表面の裏側には、どんなものが秘められているのだろう。
私はそれを、知りたいと思った。

美しくみえる、穏やかに見えるものの裏側にこそ、蠢く何かがあるのではないか。
私には、そう思えてならない。