ざわわ、ざわわ、ごう、ごごう。
風は音を立てて吹き荒れ、雨は横殴りに降っていた。
それでも私たちを止められるものは、何処にもなかった。
いまさら、ここまで来て、私たちはもう、止まることなどできなかった。
森の中へ歩き出す。
ごう、ごごうごごう。樹々はまるで嘲るように唸っていた。
ばしばしと、音を立てて雨粒は地面に突き刺さった。
三人とも、着ているものはまたたくまにずぶ濡れになっていった。
それでも、歩みを止めることはなかった。
頭上で雲はぐいぐいと流れ、その表情は一瞬として同じものはなく。
強まったり弱まったりしながら、雨粒は私たちの頬を叩いた。
と。
それまで右に左に揺れていた樹々が、その瞬間、ぴたりと止まった。
彼女と彼が、そこに立った瞬間だった。
森が沈黙している。
私にはそう感じられた。
彼女と彼とをまるで、出迎えるかのような沈黙。その沈黙は、じわじわと、辺りに広がっていった。