私が niko さんにさよならした理由は「声を聴かせて」の中でもうすでに書いた。
だからここで触れる必要はないかと思う。
でも時々私は思い出すのだ。
あの日彼女が思い切り走っていった、その先にあった光のことを。
あの日、公園では桜がきれいに咲き始めたところだったことを。
ひとは、交われば交わった分、誰かの心の中に足跡を残すもの。
niko も私の中に、確かにその足跡を残してくれた。
だから私は折々に空を見上げ、そっと呟く
元気ですか。
元気でいますか。
もちろん返事があるわけではない。
ないけれど。でも。
きっと彼女は今日も足掻きながら、いやもしかしたらとんでもなくしなやかに
生き延びていてくれているに違いない、と、そう
信じている。
元気ですか。
元気でいますか。
私は、ここに、います。
(「冬咲花」 終)