2014年7月28日月曜日

夏の空に思い出す


彼女とこの写真を撮ったのはいつだったか。
正直覚えていない。
が、夏の激しい空を見上げると、自然、彼女を思い出す。
夏のよく似合う、ひと、だった。

彼女は写真をやるひとだった。
私が妬ましくなるような写真を、彼女はその頃すでに作っていて。

私は彼女の作品を見るたび、見せられるたび、嫉妬でぐるぐる巻きになりそうだった、と、
今なら正直に、言える。

何だろう、写真を向けなければ何もなかったかもしれない、通り過ぎて気にも留めず通り過ぎて、それで終わっていたかもしれないものたちを、これでもかというほどありありと刻み、浮かび上がらせる術を、彼女は持っていた。
それはまるで対象への執念、あるいは怨念のような、そういっても過言じゃないほどのエネルギーを、私は常に彼女の写真から感じていた。

彼女と別々の道を往くようになって。
今の彼女のゆくえを私は知らない。
どうしているかも知る由も、ない。

それでも。
折々に、思い出すのだ。彼女のあの眼を。
いつだって誰かに縋っていたいような、切実な眼、を。

君はきっと、誰より、君がそうしてほしいように対象を写真に刻み込んでいたんだ。
私はそう、思っている。