2014年6月30日月曜日

「冬咲花」より 03

 
そもそも nikoは何故声を上げようと思ったのか。
私に撮られようなんて思ったのか。
性犯罪被害者である彼女が、何故自分の姿を晒そうと、晒してまで訴えようとしたのか。

自分と同じような被害に遭い、今沈黙を強いられている誰かに、自分はここにいるよと伝えたかった。
そうやって蹲っているのは何もあなただけじゃないんだよと伝えたかった。
あなたもわたしも、生きていていいんだよ、と何より自分が信じたかった。

まだ事件に遭って間もない彼女は、いつだって揺れていた。
揺れながらも、でも、必死に足を踏ん張っていた。

だから。
私も彼女に、正面から応えよう、と努めた。

冬の終わりの或る日、私たちは森林公園へ行った。
早朝の撮影、その直前彼女は発作を起こした。
これは撮影なんて無理かもしれない、とどこかで思いが掠めた。
でも。

私たちは、バスに乗り、公園へ向かった。
蒼褪めた顔の彼女を、私は追いかけた。彼女は徐々に生気を取り戻していくようにも感じられたが、でも同時に、久しぶりに外に出たせいで疲労の色が濃かった。

彼女の裸足の足は、必死に大地に踏ん張っていた。
それを見て私はどれほど、励まされる思いがしたことか知れない。
心の中で私は言っていた。
大丈夫、大丈夫だよ niko さん。
あなたはちゃんと、そこにいる。