2010年2月3日水曜日

砂の痕

砂場のある公園は、本当に数が少なくなった。あっても、時間になると網などを被せられ、もう遊ぶことはできなくなる。
そもそも、土のある場所が少なくなった。いや、このあたりではもう殆どなくなった。だから霜柱もぬかるみも水たまりも、殆ど見えない。あるのはアスファルトの、のっぺりした顔。

或る日、娘と一緒に、公園を探しに行こうということになった。引っ越した部屋から一番近い公園は何処にあるだろう。そうして私たちは、リュックにおにぎりを詰め込んで、歩きだした。

そうして見つけたのが、棚田のような場所に建つ公園。小さなお寺の隣に在る。アスファルトの坂道を上ってゆくと、まずブランコと小さな砂場があり。そうしてさらに逆方向に坂を上ってゆくと。
なにもない空間。

遊具も何もない、ベンチらしいベンチさえない。まさにただの空間がそこに在った。娘がわぁと云って走り出す。砂の上寝そべり、ごろごろと転がり始める。
その時、さぁっと陽光が降り注ぎ。私の目の前に広がるのは砂の文様。燦々と降り注ぐ日差しに浮かび上がる、砂の痕。
ママ、すごいね! 娘が云う。すごいね、すごいよね、私も返事をする。一か所とて同じ痕はなく。何処までも何処までも、二度とない模様が描かれ。

陽光は降り注ぐ。燦々と降り注ぐ。砂の上に。私と娘に。