2010年7月23日金曜日

転寝

それはとても天気の良い日で。私たちは電車とバスを乗り継いで、ようやくその場所までやって来た。
陽光は燦々と降り注ぎ、私たちは一歩進むたび汗を拭い、そうして場所を探した。

ねぇこの樹、いい具合に隙間が空いてるね。
まるで椅子みたい。
そうだね、座ってみる?
うん。

幾本かの樹が絡み合って、本当に、小さな小さな椅子を作っていた。そこに座った彼女は、いい気持ちだなぁと大きく伸びをした。
降り注ぐ日差しの中、そよ風が渡っていた。遠くでは家族連れのはしゃぐ声が響いていた。穏やかな穏やかな午後だった。

彼女の素敵なところは、私が頼まなくても、指示を出さなくても、すっと写真を撮られるモードになってくれるところだ。
自分を空っぽにし、そこに在ってくれる。
だから私は、何色でも、思うようにそれを染めることができる。

なんかこのままここで眠っていてもいい気がするよ。
どのくらい眠れそう?
百年、二百年、いや、千年くらいは眠れそう。
いいね、それ。

見上げると、まだ萌え出したばかりの芽が、枝のあちこちに点在しているのが分かった。季節は冬と春のちょうど境目。

あの樹はあの後、どうしただろう。今もあの窪みを残しているのだろうか。
今度またあの場所を訪れて、今度は私があの場所に、ちょこんと座ってみたい。