2010年7月20日火曜日

「三〇四号室」

君がわたしの背中で
しゃくりあげる分だけ雑草を抜いていたら
あっという間になくなった
ベランダに並ぶ白いプランター
地べたから遠く離れた場所なのに
何処からかやってきては根付く雑草が

昨日沸かして一晩置いた やかんの水は
まぁるいまぁるい粒になって
薬臭さをすっかり失い
わたしのおなかへ落ちてゆく
井戸水とまではいかないけれど
まぁるくまぁるく 軽やかに

あなたは確かにそこにいた
今日もそうしてそこにいる
けれどわたしは
いつのまにかその場所を後にしていたようで
君の声は だいぶ遠いのです
おぉい と呼びかけるあなたの
声はだから 飛んでゆくのです
わたしの耳に 届く前に

まぁるくまぁるく 軽やかに
あなたの声は飛んでゆき
まぁるくまぁるく 軽やかに
水道水だった水はわたしの中に溶けてゆき
今はただ
背中でしゃくりあげる君の
声が辺りに響きます

明日になったらまた
雑草はやってくるかしら
このベランダの このプランターの
これっぽっちの土を探し出して