2014年6月18日水曜日

心ざわめかす


とある写真家の冊子を見終えたオットが呟いた。
下手だな。
私が戸惑っているとオットが続けた。
下手でも、残るんだ。残るんだよ、未来にこうやって。
うまい写真が残るかと言えばそうでもなくて。
残る写真ってのは、うまい下手じゃあ、ない。

なるほど、そうかもしれない、と思って改めて周囲を自分を見回してみる。
私が心動かされる写真はどんな写真だったろう、惹かれる写真はどんなだったろう、
そうして見回して、改めて気づくのは。

私は。
うまい写真が撮りたいわけじゃあないというそのこと、だ。

じゃぁどんな写真が撮りたいかといえば。それは、
よくも悪くも、ひとの心をざわめかせるような写真が撮りたい、
だ。

よくも悪くも、といったのには意味がある。
ただ心地いいだけの写真が撮りたいわけではないからだ。
心地いい写真、それはたとえば、気持ちよくなったり伸び伸びさせられたり、嬉しくなったり。
そういうプラスの感情が喚起される写真のこと。
私は、
そういう写真を否定するわけじゃないし、それらを撮れるならもちろんそういった写真も撮りたいとは思うけれど、けれど、でも、

私が目指すところはもっと、別のところに、ある。

心ざわめかす、写真が撮りたいのだ。
良くも悪くも。
見るには痛みを伴ったり、苦痛を伴ったりもするような。
それなのに、
どうしても立ち止まらざるを得ないような。

気になって気になって、どうしてもその写真の前に立ち戻ってきてしまう、そんな、

写真が、私は撮りたい。