君が一番微妙なお年頃に、私は再婚という道を選んだ。
それについて、ほんの少し、君に、申し訳なさを感じている。
君が物心ついたときには、君は私とふたりきりで、世間で言うところの「お父さん」なんてものは我が家には存在しなかった。
だから、君にとって、大人といわれる年頃の男は、どこか違和感を覚える存在になってしまった。
よく言っていたね。
「どうせ捨ててくんだよ、みんな」
小さい頃、そんなことをぼろぼろと、折々に呟いてたね。
今そう思っているかどうか私は確かめたことはないけれど。
きっとそれは、君の隅々に、染み渡っているに違いない。
そう思うから、ずっと躊躇ってた。
どうしてこのひと選んだの?
君はいつだったか訊いてきたよね。
だから今応えるよ。
君と喧嘩してくれそうだから。
ママはね、君としっかり組み合って、喧嘩してくれる、そんなひと、探してたんだ。
もちろん、ママが好きになったから、ってのは一番にあるけれど、
その次にね、
それが、在る。
いいんだ、すんなりうまくいくなんて思ってない。
君と彼とが、いがいがといがみ合うことなんて、百も承知。
それでもね。
いつか、ね、
あぁ家族になってよかったな、って言えたら、それでいいよなぁって
ママは思ってんだ。