2014年2月28日金曜日

先生の遺言


恩師からDVDが届いた。恩師が北大で講義を行なったものを録画したものだという。
「これを君に、僕の遺言として渡そう」。
そう手紙には記されている。

恩師からの遺言。
そう思うと、生半可な気持ちでは見ることができない。
おかげでまだ、見ることができないままでいる。

先生、先生は、樺太は無いものとされた場所、と言った。
私にとってかつて遭った性犯罪被害が、似通ったものだった。
加害者たちによってたかって「無かった」ものとされてゆくのを、私は当時ただ呆然と見守り見通すことしかできなかった。

先生、先生の樺太と、私の体験した出来事が似ていると感じるのは
私のひとりよがりだろうか。
それだから私は先生の、樺太を知りたいと思うようになったと言ったら
先生は笑うだろうか。

先生。
先生の来た道を、私はすべて知ることなんて、絶対にできやしないってそんなことは分かっているけれど、だからこそ、「今ここ」の先生に、寄り添っていたいと思うんだ。寄り添わせてほしいと思うんだ。
先生、先生は私にとってひとつの憧れなんだよ。
そしてそれはもはや、私のひとつの「日常」なんだ。

ベランダでハーブが咲き始めた。
もう、春はすぐ、そこ。