2010年10月7日木曜日

突然現れた女の子

その子は突然現れた。この街から遠く離れた、遠く遠く離れた街からわざわざやって来て、私の写真を撮って欲しい、と、その子は言った。

そういう出会いは、正直初めてだったので、ちょっと面食らった。
でも、撮れませんなんて言う雰囲気ではなく。
私は、自信はなかったけれど、シャッターを切り始めた。

でもあっという間に、何と言うのだろう、彼女は私のテンポについてきて、馴染んできて、今初めて会ったような気が、全くしないのだった。

あの時、彼女はどれほどのものを抱えてここまで来たのか、私には知る由もなく。
私はただひたすら、彼女を追いかけ、シャッターを切った。

その夜、泊まる所がないという彼女を家に泊めた。すると、しばらくして彼女が口を切った。聞いて欲しいことがあって。
彼女の幼少期の性的虐待の話だった。医者にかかろうと思っているのだが、一体どこから何を話したらいいか全然分からない。どうしたらいいのだろう、と彼女が言う。
私は、彼女の話をすべて、タイプしていくことにした。

そうしてできた彼女の話をまとめたプリントは、一体何枚になったか、覚えていない。結構な量だった。
彼女はそれを胸に抱いて、これでようやく治療ができる、と涙をひとつ、ぽろりと零した。

翌日帰っていった彼女。その後、数回やりとりをし、自然に遠のいていった。
そして私の手元には、彼女の写真が。
どうか彼女が、今幸せでありますよう。祈るように思う。