2014年2月7日金曜日

どうしてこのひと選んだの


君が一番微妙なお年頃に、私は再婚という道を選んだ。
それについて、ほんの少し、君に、申し訳なさを感じている。

君が物心ついたときには、君は私とふたりきりで、世間で言うところの「お父さん」なんてものは我が家には存在しなかった。
だから、君にとって、大人といわれる年頃の男は、どこか違和感を覚える存在になってしまった。
よく言っていたね。
「どうせ捨ててくんだよ、みんな」
小さい頃、そんなことをぼろぼろと、折々に呟いてたね。

今そう思っているかどうか私は確かめたことはないけれど。
きっとそれは、君の隅々に、染み渡っているに違いない。
そう思うから、ずっと躊躇ってた。

どうしてこのひと選んだの?
君はいつだったか訊いてきたよね。
だから今応えるよ。

君と喧嘩してくれそうだから。

ママはね、君としっかり組み合って、喧嘩してくれる、そんなひと、探してたんだ。
もちろん、ママが好きになったから、ってのは一番にあるけれど、
その次にね、
それが、在る。

いいんだ、すんなりうまくいくなんて思ってない。
君と彼とが、いがいがといがみ合うことなんて、百も承知。
それでもね。
いつか、ね、
あぁ家族になってよかったな、って言えたら、それでいいよなぁって
ママは思ってんだ。

2014年2月5日水曜日

にっと笑って



君の友達が リストカットをしていると知った時
君は友達からカッターナイフをとりあげた。
自分がカッターナイフを預かって、必死に止めにかかった。

それでも友達はやめてくれなくて
傷は増えるばかりで
その時初めて君は
私にぼそり言ってくれたね

ママ、私は役に立たない奴なのかな

違う
そう声を大にして言いたかったけれど
言うほどに君には嘘っぽく聴こえるような気がして
私は逆に にっと笑ってみせたんだった

役に立たない奴なんて
この世界どこを探したっていないんだよ
人という字を見てごらん
ひととひとが寄りかかりあって
できあがってるんだ
ひととひとは
そうやって支え合って存在してるんだ

本当はそんなこと言いたかったんだけど
言葉が下手な母は、ただ黙ってにっと笑っただけで

でも
君も にっと笑ってくれたんだったよね、あの時

そして

友達はうちに遊びに来るようになった
うちで泣いたり笑ったりするようになった

君は

私の知らないところできっとそうやって
いくつも痛んで傷を負って
そうして 成長してるんだって
教えられた気がしたよ

2014年2月3日月曜日

ただそこに


思い出す。
最初の頃、彼女は一生懸命カメラの前でポーズを取ろうとし、ピースサインやら笑顔やら必死になっていたことを。
私がそれを全部、要らないよ、と言った。
きょとん、とした顔で、なんでと訊くから、
そんな無理矢理ポーズ作ったって変じゃん、と言ったら、ぽかーん、とされた。

保育園ではみんな、園長先生が写真撮る時、ポーズするんだよ、決まってるんだよ、と言うから
それはそれ、ママの写真はママの写真、きっと違うんだよ、と応えた。

以来、彼女は、どちらかというと仏頂面でカメラの前に立つ。
ふだんから彼女は、どちらかというとぶすっとしている。
だから、それで、いい。

ただ、そこにいてくれれば、それで十分なんだ。
そこに在ることが、大事なんだ。
―――本当は、そう伝えたいのだけれど。

いつか君が気づいてくれることを
願ってる。

2014年2月1日土曜日

正直に言おう、


正直に言おう。
ここ数年、君の色香に私はやられている。

別に、甘い香りを纏っていようと、リップクリームなんぞをひいていようと、
そんなことにたじろぐような私では、ない。
しかし。
レンズ越し、これでもかというほど濃厚に漂ってくる君の色香には
正直、参る。

すっと眼を逸らしたくなって、すっと意識をどこかに飛ばしたくなってしまう。
ここ数年の君は、眩しすぎる。
母には、眩しすぎる。

母だと思うから眩しすぎるのだな、よし、と
気を取り直してレンズを構えるのだけれど。

そうするともう、私はいつものように君に挑みかかるかのごとく
写真を撮り続けてしまうから。
いつも君に文句を言われるんだ、
「いつまでやってんのー!もう終わりにしようよー!」
って。

2014年1月29日水曜日

少女へ


ぽてっと腹が出ていた頃から
手足がすっと長く伸びてきた頃。
気づけば君はすっかり幼児から「少女」に変わっており。

なんだか眩しくて。
正直母は、君を正面から見つめるのが照れくさくなるほどだった。

君の目は容赦なく
レンズの向こう側から私を射るから
私もそれに応えようと
足を踏ん張ったりして。

そうやって時間はどんどん
積み重なり

私の後ろをついてあるいていた君はもういなくなった
いつだって私の前を
すっと歩いてゆく少女に なった

2014年1月27日月曜日

シャボン玉


シャボン玉遊びが大好きな娘だった。
学校の後普段は学童へ行く。
でも私が家で仕事をしている日だけは学童へ行かずこっそり私の家へ戻ってきたりする娘で、そういうときはたいてい、彼女はシャボン玉をひっぱりだしてきた。

ベランダで、ぷー。
外に向かってぷー。

夥しいほどのシャボン玉が生まれては消え、消えては生まれ。
彼女はそのたび、にぃっと笑って手でシャボン玉を追いかけるのだった。

いつごろだろう。
気づいたら彼女は、シャボン玉を卒業していた。
今じゃきっと、彼女はすっかり忘れているんだろう。
そして彼女が子供を育てる頃になって
その子供がシャボン玉に興じる姿を見、はっと思い出す日が来るんだろう。
いつか。いつの日か。

2014年1月24日金曜日

凛とした、


冬が好きだ。
とてつもなく好きだ。

凍え切ったりんりんと張り詰めた大気、凍るように燃える夜明け、
葉が落ちた後の枝に張り付いた固い固い新芽。

どれもこれも
私の琴線を震わせてやまない。

そして。
みっちゃんは、冬がとてもよく似合うひとだ。
それはきっと、彼女の生き方、生きる姿勢にあるんだと私は思っている。
悩むだけ悩んだら潔く立ち上がり足を踏み出す、
過ぎ去ったことは笑い飛ばし、
そして何より、
まっすぐであるということ。

凛としたひとが好きだ。
凛としたひと、凛とした季節。
世界は矛盾で満ち満ちている。凛としたものばかりでも、筋の通ることばかりでも、ない。むしろ
そういったモノたちが忌み嫌われることが多かったりもするのだけれど。

それでいい。
ありとあらゆるものが混在している、ありとあらゆるものが抱かれている世界。

そんな世界に、私たちは、生きて在る。