自分がぐらぐらしているとき、私が必ず行く場所がある。それは海だ。
自分を真っ新に戻すのに、海はうってつけの場所だと思っている。
私から海を失くしたら、足が一本折れてしまうのと同じといっても過言ではない。
小さい頃から海が好きだった。
海と初めて出会った日、迷子になって警察のお世話になるほどに、一瞬にして恋に堕ちた。
海はそう、私の愛人だった。
心が折れて、外に出ることさえできなくなった時期、私はひたすら海を思って部屋で過ごしていた。
ああ今ここに海が在ってくれたら私は、どれほど救われるか知れないのに!
そう思いながら泣いた。
世界に立つ場所がなくなってしまうような時でも、
海の傍らになら、赦される気がした。
どんな現実が私に押し寄せても、
海の傍らにだったら、存在していられそうな気がした。
だから。
死ぬと決めたとき、その場所は迷うことなく海だった。
海でなきゃ死ねない。そう思った。
だから私はあの日、海に走った。
でも、海は私を生かし、私はつまり生き残った。
だから今、ここに在る。
あの時生かされた命を、何処まで輝かせられるか、が、
私の海に対する応えだと、そう思っている。
誰にでも。
そういう場所があって、いい。
そういう場所を、探し求めていい。
そしてもし、ここだ、と思えたなら。
誰が何を言おうと、そこはあなたの場所なのだ。
迷ったら、惑ったら、そこへ行けばいい。
現実の世界の誰が何があなたを全否定したとしても。
その場所は、きっとあなたを受け容れてくれるから。
生きろ、生きろ、生きろ・・・
そう、囁き続けてくれるはずだから。