2014年8月29日金曜日

雨雲の向こうの青空を信じて


彼女のご両親は決して悪人でもなんでもない。ごくごく普通のひとたちだ。
でも。
「あんなことさっさと忘れなさい」
「どうして忘れられないの?」
「地道に生活を営んでいればじきにそんなこと忘れられる」
と繰り返す。
そう、ごくごく普通のひとだから、普通だったから逆に、
当たり前の反応しかできず、娘の現実を決して受け入れよう赦そうとはしないひとたちだった。

退院してすぐ、彼女を連れてご両親は北の国に帰って行った。

「忘れなさい」「あなたにも落ち度があったに違いない」「いつまでそうしているの」
そういった言葉たちを日常的に繰り返し浴びせられるようになった彼女は
どんどん疲弊していった。
そして、今まで以上に、リストカットやオーバードーズを繰り返すようになり、
結果、しょっちゅう入退院を繰り返すようになり・・・。

つい昨日、彼女からメールが届く。
 もう疲れたよ、身近にいるひとに理解してもらえないって、本当に辛い。
 一体どうしたらいいのかもう分からない
そう記された文字を、私はぎゅっと握るしか今はもうできない。

遠い場所に行った彼女のところへ駆けつけられるわけもなく。
ただもう、ぎゅっと握って唇をかむくらいしか、私にできることは残されていず。

見上げる空は今日、曇天。暑い雨雲に覆われている。
いつ降り出してもおかしくはないその雨雲の、
向こうは絶対に青空なんだよ、と、
青空が広がってるんだよ、わたしやあなたの空にも必ず。
私はそんなことをぶつぶつ呟きながら
今日も必死に生きる。

彼女が生き延びてくれるよう、
生きて生きて生きて、生きてくれるよう、
ただ、祈りながら。