2011年8月12日金曜日

幻霧景Ⅰ-11

この年、蝉が実にたくさん羽化していた。
この朝も、あっちこっちに脱ぎ捨てられた蝉の抜け殻が転がっていた。女の子がそれを、ひとつ、またひとつ、拾ってはポケットにいれてゆく。
撮影が終わる頃には、その抜け殻はポケットの中、くしゃくしゃになっているのかもしれない。それでも彼女は、ひとつ、またひとつ、ポケットに抜け殻を入れてゆく。大事そうに。

その時ふわぁっと東からの陽光が弾け。少女の髪がきらきらと輝いた。まさに天使の輪がその髪を彩っていた。