2010年11月22日月曜日

花と女



何という名前の花だったのか、もう覚えていない。その時の撮影に、私は、見かけがごつい花をあえて選んで、三、四本持っていった。
モデルになってくれる彼女はとても華奢で、だから彼女の姿からしたら、このごつい花はかけ離れたイメージがある。でも。
何故だろう、どうしてもその花が気にかかって気にかかって、だから私はその花を選んで持っていった。

砂丘の、只中に立った彼女の、後姿を捉えた時、気づいた。あぁここだ、ここにあの花が必要だったんだ、と。
百八十度、まっすぐの地平線、そこに立つ華奢な彼女、そして。
その彼女を飾るように、あの厳しい花々。

そして改めて気づく。彼女はとてもとても華奢で可憐な人なのだけれど、とても骨太だということに。そう、一本ぐいっと芯が通っている。その外見からは想像もつかないほどの強い太い芯が、通っている。
あぁだから、この花だったんだ。私はカメラを構えながら、改めて頷く。

天気はどんどん崩れてゆく気配。その気配に、もし彼女が華奢なだけの人だったら押し潰されていたかもしれない。でも。そうならない芯の強さが、そこに在った。