それは畑と畑の間の小道にあった。無造作に積み上げられたブロック。
ママ、これ何するもの?
何するんだろう? わからないなぁ。
ふたりして首を傾げる。
のぼってもいい?
いいよ。
それはとても晴れた日で。空には殆ど雲がなく、濃い水色の海からは魚が跳ね出してきそうなほどで。
ねぇママ、空はどこに繋がってるの?
空は・・・空だよ。うん。
何処に繋がってるの?
うーん、世界中に繋がってる。
あ、飛行機。
あ、そうそう、飛行機の道があるんだよ、空には。
飛行機の道?
うん、空にはね、飛行機の道があって、だから飛行機がぶつかったりしないでちゃんと飛んでいけるんだよ。
道、見えないよ。
うん、見えない道なの。
どうやったらそれが分かるの?
いっぱい勉強して、空の道のことについて勉強して、それで覚えるんだよ。
ふぅーん。
娘が突然手を打ってこんなことを言う。
ねぇママ、ママが迷子になったら、空の道使って探しにいってあげるね。
ママ、迷子になんてならないよ。
いやいや、ママは時々ふらふら歩いてるから、迷子になる時もあるよ、絶対。
ははははは。じゃぁその時はよろしく。
よし!
ふたりしてしばらくそうしてじっと空を見上げていた。首が痛くなるまで。ふと振り返ると。
ブロックに座した娘が、空に溶けていきそうな気がした。