2013年6月3日月曜日

花迷子-1


彼女の写真を撮ろうと考え始めたとき、浮かんだのは、虚ろな人形、だった。
理由は幾つかあって、その一つは、彼女が常に鎧を着ているように見えたこと。本心(本性)を押し隠し、にっこり笑っている笑顔が印象的に見えたこと、だ。
彼女と接する時間を重ねれば重なるほど、その印象は強くなった。何故こんな鎧を着ているのか。着ねばならなくなったのか。私はそれを、とても知りたいと思った。
また、彼女の笑顔は悲しいほど明るく弾ける。口元目元、体中で弾ける。なのに何故だろう、時折瞳の奥だけが置き去りにされているような、笑っていないと思わせる翳がよぎるのだった。
そうした私が受けた印象が、虚ろな人形、というものを思い起こさせた。
だから彼女に写真を撮らせて欲しいと伝えると同時に、私は、空っぽの、人形に見立てて撮らせて欲しい、と伝えた。

二十歳になったばかりの彼女は、全身生気漲っている。漲っている、はずなのに、何故こんなにも瞳の奥底が暗く沈んでいるのだろう。それがとても、私には気がかりだった。
だから、いっそ、虚ろになってもらえたら、彼女の本心がむしろ浮き彫りになるんじゃなかろうか。そう思った。