2014年4月20日日曜日


百合の花が好きだ。特に真っ白の、
カサブランカとかそんなんじゃなく、ただまっすぐに咲く白百合が、私は好きだ。
百合の花を見つめていると、もうそれだけで背筋が伸びる。
顎を引いて、同時にぐっと前を見て、まっすぐに歩きたくなる。
へこたれて、うなだれて歩いているような最中に白百合に出会うと、だから、
私はぐっと涙を呑んで悔しさを呑んで、きっと前を見て歩く。

そもそも。
白という色が好きだ。憧れる。
昔、白は、すべての色の「はじまり」の色なんだと思っていた。そういうふうにどこかで教わったような記憶がある。だから私はそう思い込んで信じ込んでいた。
白がはじまりで、黒が終わりの色だ、と。

でも何かの折に、世界の別の国では
すべての色を混ぜ合わせた先に白がある、
と言い伝えられていると知った。
愕然とした。
たかが色の話、と思うかもしれないが、私にとっては青天の霹靂で。
これまでの世界観をがらり、変えるだけの威力を持っていた。

そうか、
白は何もかもを昇華し、超越し、その先に辿り着ける色なのだ。
単に生まれたての真っ白さとか、清らかさ、ではないんだ。
いやむしろ。
清らかに見える白は、すべてを包含してなお、光り輝く色なのだ、と。

そうして改めて世界を眺めてみたら。
なんだか、これまでと全く違った色味に見えて来ることに気づいた。

私はこのことを知ることで、どれほどに解放されたか知れない。

黒の似合う私は、何処までも穢れて汚れて惨めな嫌われ者と思っていた。
でも、
そうか、憧れる白でさえ、
ありとあらゆるものを飲み込んで乗り越えて、そうして生まれる色だったのだ、と。

だったら。

私もまだ、生きている資格があるかもしれない。
私もまだ、終わりじゃないかもしれない。
まだ、
まだ生きてて、いいのかもしれない。

そう思って、ぼろり、涙が零れた日のことを、
今もありありと、思い出す。