2013年9月12日木曜日

彼女の肖像vol.3~顔のない女 07


「時々ね、今でも思っちゃうの。あんな事件さえなければ、って…」

彼女が突如そう言う。
あぁ、私もその言葉を、一体何度繰り返したことだろう。あの事件さえなければ。性犯罪被害にさえ遭わなければ。
私たちは、被害に遭う前、共に、いわゆるキャリアウーマンだった。男ばかりの会社で、試されるように次々仕事をこなしていた。それは私たちを形作る上での、大きな大きな要素であり、譲れない部分でもあった。私たちは働く場所は違えど、共にそうやって、戦っていた。
でも。
あの日を境に、それは崩壊した。音を立てて崩れ落ちた。がらがら、と。
そして残ったのは。
もう二度と同じ仕事に戻ることができない、そんな、病に振り回されるばかりの自分だった。