2013年6月27日木曜日

花迷子-8


撮影も中盤を過ぎた頃、裸足になってもらっていた彼女が笑い出した。

「裸足って気持ち良いですね!こんなに気持ち良いって忘れてましたぁ!」

普段人ごみに塗れた街も、この早朝という時間帯はがらんどうで。まさに言葉通り、私と彼女しかいなかった。それもきっと彼女に作用していたろう、彼女は踊るようにスキップしていた。
それなのに。それなのに何故だろう、私はカメラを通して彼女を見つめると、どうしても踊りながら泣いているように見えてしまうのだった。

(「花迷子-9」へ続く)