2013年6月10日月曜日

花迷子-3


彼女は撮影に当たって大切にするぬいぐるみを持参してきていた。お人形といわれたとき思いついた、と彼女は話す。それに、カメラの前に立つのにひとりよりふたりの方がちゃんと立てる気がして、と。
そんな彼女は最初ぬいぐるみを両手で前にかき抱いていた。大事そうに、というよりも、まるでしがみつくかのような具合だった。彼女はそのことに気付いていたろうか。だからあぁ彼女はずいぶん緊張しているのだなと知ることができた。

(「花迷子-4」へ続く)