2013年5月25日土曜日

彼女の肖像2-8


いつも、これが最期かもしれない、と思っている。これが最期の撮影になるかもしれない。彼女とカメラを挟んで向き合うのはこれが最期かも、と。
今回もそうだ。彼女の足は病巣はますます膨らんで、痛みを増して、彼女に圧し掛かる。私はただそれを見つめるしかできない。
それでも。だからこそ。私達は必ず撮影の最後にこんな言葉を交わす。
「今度どうする? いつにしようか?」
それが実現可能かどうかなんて問題じゃない。私達の気持ちが、そこへ向かっているということ、それを明らかにすることだけが、ここでは大切で、それ以外の何者でも、ない。
「また向き合うのだ」という気持ちを失わないこと。その為にも病に負けないこと。それが、私達を次に、明日に、向かわせる。

この日彼女は私が三月末に産んだ子を初めて抱いた。私の妊娠が分かってから彼女は言い続けていた。「絶対抱かせてね、抱くんだもん、あぁ楽しみ!」。
写真には残さなかった。残せなかった。でも。
彼女はじっと、小さな命の塊を見つめていた。何処までも何処までもいとおしげに。

彼女の命はあと、どのくらい。
その間彼女は一体どれ程の痛みに耐えねばならぬのだろう。
答えは、ない。でも。
彼女はとことんまで生きようと足掻くんだろう。私はそう信じている。だから私は、そんな彼女をただ、一瞬も見逃さぬよう、見つめ続ける。

(「彼女の肖像 vol.2 」 終)