2011年12月15日木曜日

おっぱい電球

その日娘と散歩をしていた。
敢えて子供と散歩するには似つかわしくない場所を選んで、私は歩いた。
そこはいわゆる夜の街で。
もう赤線はさすがになくなったものの、それでもこの界隈は相変わらずの姿をしており。
私は娘に、知っておいてほしかったのだ。
こういう場所があるということ。
こういう場所が必要とされている世界のこと。
知っておいてほしかった。

カメラをおおっぴらに持って子供と歩くのは危ないと思い、ホルガを選んだ。そうして歩いていると、突然娘が立ち止った。

ママ、おっぱい。

私は吃驚した。おっぱいって、あなた、さすがにもうおっぱいの年頃じゃぁあるまいに、と。言いかけて、慌てて彼女の視線の先を辿った。
成程。
おっぱいが、そこに在った。

以来、私たちは、そこを歩くたび、おっぱい電球を見上げる。
そして小さく、やっぱりおっぱいだね、と笑う。