2011年8月8日月曜日

幻霧景Ⅰ-10

靄につつまれていた風景が露わになり、緑の芝がくっきりとその姿を現し出した。そこに横たわる二人。
しんしんと、静かな時間が流れていた。

そういえば花がないね。そんなことを彼女が呟き、私は辺りを見回した。あぁ季節の狭間のせいかもしれない、花らしい花が今咲いていない。改めて気づく。
夏の終わり、少女はふとしたときに物憂い眼差しをしてみせる。まだそんな年齢でもないだろうにと思った直後、思い直した。
この一瞬、一瞬のうちにも、彼女は成長しているのだ。そう、この撮影の間にも。