2011年7月8日金曜日

幻霧景Ⅰ-01

それは夜明けとともに始まった。まだ薄暗い森林公園。
うっすらと霧のかかった朝の光景。どの樹もどの樹も、しんと鎮まり返っている。
その静けさがたまらなく心地よい。
私のフィルムの感度で、ちょうどこれが始まりの時刻。

広がる草の原を見つめていた私は、その子に声を掛ける。
ねぇ、あそこまで走ってみようか。

その子はコクリと頷き、私の掛け声とともにダッシュした。
小さい子にはまだその距離は辛かったろうに、それでもその子は必死に丘を駆け上がっていった。
一方私は、シャッターを切り続けている。

そして私がカメラを下ろすと、それまで私の隣にいた彼女がその子を迎えに、自然歩きだす。
撮影の、始まりだった。