2011年5月2日月曜日

靡く草叢

砂丘が海へと繋がる坂道に現れたのは草叢。以前来た時この草叢はなかった。ここは砂地だった。そうか、砂が海に流れ去った後、この草叢ができたのか。
私は想像する。流れ去る砂粒たちと入れ替わりに風に乗ってやってくる夥しい数の種。そうして生まれたのだろう、この草叢。

傍らにしゃがみこみ、じっと草叢を見つめる。強風が長く伸びた草をびゅるるびゅるると嬲っている。
眼を閉じ耳を澄ましてみる。私の世界は風の音だけに変わり、それはまさに容赦のない猛り狂う風の音で。私は思わず背筋がぶるりと震えるのを感じる。

ふと思う。
私が生まれるずっとずっと前に、すでに砂丘はここに在り。そうして今、長い時を生きた砂丘は急激に老いさらばえようとしている。人が年老いてやがて死んでゆくように、砂丘も一刻一刻、死に向かっている。
そんな気がしてならない。