2011年1月27日木曜日

髪の毛

娘の髪の毛は、まっすぐに伸びている。
まだ穢れを知らぬかのように、つやつやと輝き、彼女が跳ねるように歩くそれに沿ってひゅんひゅんと揺れる。

年を重ねて知ったことのひとつは。
髪の毛さえも年を含んでゆくということ。
癖のなかった真っ直ぐな髪が、いつの間にか癖に塗れ、艶を失ってゆく。
でこぼこの、まるでそれは自分が歩いてきた道程の、そのままを現すかのように。

砂利道を歩くと、一足ごとにしゃり、しゃり、と石の擦れる音がする。
娘の軽い足音と、私の重みのある足音とが重なり合うように森に響く。
先を往く娘のその軽やかな足取りは、まるでちょっとした妖精のようにさえ見える。

ねぇママ、森の匂いって、いれたてのお風呂の匂いに似てる。
あぁ、そうかもしれないねぇ。
あったかくって、でも涼しくって、いい匂いだぁ。
うんうん、そうだね。深呼吸したくなるね。

娘の歩く行く先が、できることならいつも、こんなふうに光に満ち満ちていますよう。
私は彼女の後ろを歩きながら、祈るように思う。