2010年12月27日月曜日

ひとつの影

光と影、というと、たいてい、光はポジティブなイメージで、影はその反対、と言われる。
でも本当にそうなんだろうか。
光の中に影があるからこそ、光はさらに輝く。影の中に光が射すからこそ影の色濃さが浮かび上がる。
両方が両方をそれぞれに支えあっている。
だから私には、光と影というのは、一組で存在しているものだ。どちらかだけでは成り立たない、両方あるからこそ互いを光り輝かせる、そういう存在だ。

あの撮影は確か冬の終わりだった。
だから影も細長く、アスファルトに伸びていて。
私はふと、彼女の足元から伸びるその影に、シャッターを切った。

彼女はその時後ろ向きだったから、私がシャッターを切ったことなど、気づかなかったかもしれない。
でも私には、彼女のその無防備な背中が露に見えており。だからこそ、シャッターを切らずにはおれなかった。

か細い肩、折れそうに細い腕。それらがこれまで背負ってきた荷物はどれほどのものだったろう。
それを思うと、胸が詰まる気がした。
でも、言葉なんて、何の役にも立たず。
だから私はただ、黙っていた。

今日もきっと彼女はこの地平の何処かで生きていて、光と影の中、佇んでいることだろう。どうかそんな彼女にとって、光と影が優しい存在でありますよう。
私は祈る。