2010年8月31日火曜日

緑破片(5)

ねぇさん、
体験者にしか、どうやっても分からないことが、こんなにあるんだね。
私、被害に遭うまで、知らなかったよ。
体験者にしか分からないこと。
そう、それは、思いがけなく被害者となってしまった人たちの、「被害後の姿と心境」だよ。
被害から抜け出すのも容易ではない上に、被害から立ち直るためにどれほどの代償を抱えて毎日を送っているのか。自分自身が望んでもいず、自分から選択したわけでもない出来事の為に、なんでこんなに苦しんで、貶められながら生きていかなきゃならないのかって、何度思いつめたことか!
数えだしたら、きりがないよ。

大樹に寄りかかりながら立つ彼女の足は裸足だ。今どれだけの異物が彼女の足の裏を傷つけていることだろう。
それでも彼女は、何も言わずに立つ。
そして私は、そんな彼女を見つめる。