2010年8月7日土曜日

虚影(1)

これは以前「虚影」というシリーズで展開した作品だ。濃いプリントが焼き込んだもの、薄いのがネガを正確にプリントしたもの。
今回改めて、モデルの方の許可を得、コメントを付しての発表ができることになった。

焼いていて思うのは、撮影したその時見えなかったものが、焼き込むほどにぐいと見えてくるということ。思ってもみなかった痕跡が、ありありと浮かび上がるということ。
そして思った。
私は今、目には見えないものを浮かび上がらせようとしているのだ、と。

それはそのまま、モデルになってくれた彼女の、彼女が内奥に抱えたモノを浮かび上がらせたいと願う私の気持ちのありようのようで。

撮影の季節はいつだったか。春か秋か、もうはっきりとは覚えていない。ただとても天気の良い日で。風が心地よく流れていたことを覚えている。
彼女はとても細くて、折れそうなほど細くて、私が肩を小突いたら、ぽーんと飛んでいきそうなほど儚くて。そんな彼女に、カメラの前に立ってもらう。

そして、私たちの撮影は始まった。