2010年7月8日木曜日

「腔」

砂のように雨が
降っていた

絵のように風が
止まっていた

疼くこの腔を
私はもてあましていた

そう、
腔だらけなのだ 生まれたときから

穿たれた腔なのかそれとも
穿った腔なのか

その境目さえ定かではなく

明らかなのはそこに
腔がある という そのことだけ

腔だらけのまま
私は歩き
腔だらけのまま
私は走り
私は呼吸し、そうして
腔だらけのまま
それでも私は生きている
これでもかというほど
生々しく

それは不幸か

不幸だった覚えはない

腔だらけだから、そこに
風が吹いた
腔だらけだから、そこに
雨が吹き込んだ
そこに腔があったから
私はあなたを感じた

私が女だったから
私が女だから
私が

私だったから

ただそれだけ
それ以上でもそれ以下でも何でもない
ただ それだけ

砂のように雨が
降っていた

絵のように風が
止まっていた

目の前の光景はそうして
横たわっていた

そうして私は今も
腔だらけのまま
ここにこうして生きて 在る