2010年6月29日火曜日

「陽炎の街」

向日葵がぎらぎらと
朝日を乱反射する
夜明け

東からの光は延びて延びて延びて、
街を真っ二つに裂く

見えない亀裂は
人を呑みこみ
影を呑みこみ、

気づけば空っぽの街
残骸と呼ばれるべき街

これは一瞬の空白

ここでの主人公は誰れ?
人間じゃないの 人間は消えたわ
主人公は誰れ?
私 私 私?

裂傷した街を闊歩する
一番に陽光を浴びた向日葵が

裂傷した街を闊歩する
二番目に陽光を浴びた朝顔が

裂傷した街を闊歩する
三番目に陽光を浴びた油蝉が

でも
もはや誰も主人公にはなれない
裂傷した街はもはや
誰も受け付けない

気づけば
呑みこまれた筈の人間が
ゆらゆらと陽炎のように再び
立ち昇り、立ち昇り、
バスに揺られ、電車に揺られ
まるで昨日までの風景
繰り返されるばかりの

しかしそれは
今日からの風景
街は裂傷した
もはや元には戻らぬ
裂傷に気づかぬ人々の
傲慢さが街を闊歩する
ゆらゆうら ゆらゆらり
世界はそうやって
今日も巡る
ゆらゆらり ゆらゆらり

二度と 元には戻らぬ