2010年3月18日木曜日

地平線

以前からその場所には行ってみたかった。地平線が真っ直ぐに伸びる場所。日本にもそんな場所があるものなのかと、坂の多い入り組んだ地形の街に暮らしている私には不思議でならなかった。一種の憧れさえ抱いた。真っ直ぐな地平線、それが描くものはどんな風景なのだろう、と。

日帰りでも何とか行ける場所に、小さい規模ではあるが砂丘が在る。友人が教えてくれた。早速行こうと決めた。どうしようもなく私はその場所に焦がれた。

晴れ渡る空の下、目の前には真っ直ぐの水平線が広がっていた。そして左右を見渡せば。やはり真っ直ぐの地平線が、長く長く伸びているのだった。
友人を追い掛け、私はカメラを構えた。追いかけてはシャッターを切り、切ってはまた追いかけて。その繰り返しで、あっという間に日は暮れ始めた。

私たちは二人並んで波打ち際に立った。海の端っこに太陽が堕ちてゆくのを、ただ見つめた。目の奥がじんじんと痛みだすまで、私たちはただ、太陽を見つめていた。

今その場所は、ずいぶんと砂の浸食が進み、砂が流れださぬようにと柵がいたるところに立てられている。だから以前のような姿を見ることは、もう叶わない。
でも私の中に残るあの光景はありありと。今もありありと、鮮やかにここに在る。